福田雄一監督が手がけ、2020年に公開された映画『新解釈・三國志』。
タイトルだけなら本格的な歴史映画に見えますが、監督やキャスト陣の顔ぶれで「絶対コメディだな…」という確信せずにはいられない作品でもあります。

韓国・香港・台湾でも公開されていたとの事で「これタイトルで真面目な三國志だと思って観た人いたんじゃないか?」と勝手に心配していました。
つい最近、大好きな『真・三國無双』シリーズが25周年を迎えたのを見て、久しぶりに三國志の世界に触れたくなってしまい、本作を観る事に。
多分その理由で選ぶ作品じゃない気もしますが、これはこれで福田ワールド全開の三國志を味わう事が出来て楽しかったです。
以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。
やりたい放題すぎる三國志
本作は『三國志演義』の大まかな流れに沿いながらも、シリアスに描かれがちな三國志の世界をコメディとして大胆に“新解釈”した作品です。
その結果、酒を飲んだ時しかカリスマ性を発揮出来ない劉備、隙あらば女遊びをする曹操、無駄に尺を使って鼻につくイケメンぶりを見せつけてくる趙雲、事あるごとに「斬首!」と叫びながら孔明を処刑しようとする周瑜など、主要人物たちは全体的にポンコツ化する方向へ新解釈されています。
そのため孫権に至っては、もうキャラ付けが面倒だったのか「すごいバカ」という雑な扱いをされていました。

ツッコミは主に彼らの臣下が行なうため、珍しく常識人枠の張飛が見る事ができます。
ストーリーの方は、大まかな歴史の流れは一応なぞっているものの、基本的にノリと勢いで突き進むので、三國志を知らない人でも十分楽しめる内容になっています。
その一方で、歴史を知っている人にとっては、潔いほどに史実を無視した展開が多いため、好みが分かれる部分もあるかもしれません。
ただ、元ネタを知っているからこそ笑えるネタも随所に散りばめられており「三國志演義」を題材にしたコントとして割り切って観れば、十分楽しめると思います。

有名な逸話を中心にやるので、美女連環の計から一気に三顧の礼へ話がぶっ飛んだりします。
戦闘シーンは本気
全体を通してほぼギャグ路線なのですが、虎牢関の戦いの呂布VS関羽・張飛や、長坂における趙雲の殺陣シーンは、意外にも本格的で見応えがありました。
本来呂布戦にいるはずの劉備はサボりで欠席していたり、趙雲は無駄に尺を取りすぎて敵に包囲された結果、糜夫人(劉備の妻)を井戸に身投げさせてしまうという、滅茶苦茶な“新解釈”であったにも関わらず、ここの殺陣シーンだけは「なぜそこはガチなんだ…?」とツッコミたくなるほど、しっかりとしたアクションに仕上がっています。
本当に見ていて面白かったのですが、何故そこだけガチだったんでしょうか。

ちなみに呂布が乗っていた馬が、ちゃんと真っ赤な赤兎馬にされていたところも激アツポイントでした。
最後に
「三國志ってなんか難しそう…」という方にも、知っている方(ただし福田ワールドが合う人に限る)にも、それぞれ違った角度からツッコむ余地を楽しめる一作。
気軽に笑いたいときに、ぜひ観てみてはいかがでしょうか。

個人的には、1人だけやたら三國志演義っぽい雰囲気が強い魯粛が気になりました。
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