以下、ネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。

あらすじ
スランプ中の作家・ジェームズは新たな着想を得ようと、妻のエムと共にリゾート地・リ・トルカ島へバカンスに来た。
そこで彼の作品のファンだという女性・ガビに声をかけられる。
その夜、彼女の夫・アルバンとエムも含めた4人で食事をし意気投合。
翌日もエマ達に誘われてドライブを楽しんでいたが、車を運転していたジェームズが人を轢いてしまう。
警察に連行され、すぐに処刑を言い渡されるジェームズ。
しかしその警察から「この島では自身のクローンを作る事が出来るので、代わりにクローンを処刑させれば良い」と言われ……。
あらゆる犯罪が許されるリゾート地
今作で舞台となるリゾート地、リ・トルカ島ではどんな犯罪をしても金さえ出せば、自身のクローンが身代わりとなって処刑されてくれるという倫理観ガン無視のトンデモ設定があります。
これによりリ・トルカ島は、富裕層が実質犯罪し放題な無法地帯となっているのですが、島側としてはこのシステムによって大きな収入を得ていることから、むしろ積極的に推奨しているようです。

被害者側はこの事実をどこまで知っているのでしょうか。
そのため、犯罪を繰り返す内に自身がクローンなのかオリジナルなのか分からなくなっていく恐怖が味わえる作品……かと思いきや、この映画の登場人物達はビックリする程、自身がクローンかオリジナルなのか気にしていません。
序盤に登場人物の1人がこれを問題提起する場面があったものの、結局みんな「自我さえあればどっちでも良いじゃん!」と言わんばかりの勢いで犯罪を繰り返します。
そのためクローンをテーマとしてはいるものの、その作り方やオリジナルとの差違などに触れる事はなく、本編中においても彼らがオリジナルなのかクローンなのか、明かされる事はありません。
しかしジェームズがクローンと入れ替わる事が出来るタイミング自体はいくつか用意されているため、もし入れ替わっているとしたらどこで入れ替わっているのか推理する楽しみがありました。
個人的にはジェームズが処刑されている自分自身を食い入るように見ていた様子に、妻のエムが異変を感じ取っていた事から、もう最初の処刑からクローンと入れ替わっていたのではないかと思っています。

そもそも誰が何のためにクローンとオリジナルを入れ替えるのか?という謎があるので、オリジナルの可能性も十分にあります!
強烈なインパクトを残したガビ
ジェームズの転落ぶりも凄まじいのですが、何より戦慄させられたのは、彼を堕落の道へ引きずり込んだガビのファムファタールっぷりでした。
初っ端からジェームズに欲しい言葉を与えつつ、時折彼に向けるねっとりとした視線に恐怖を感じさせられたりと、どこか異様なオーラを放っています。

恥ずかしながらこの映画で初めてガビ役のミア・ゴスを知ったのですが、あまりの怪演に圧倒されてしまいました。
そして終盤になるにつれ、飴と鞭を使い分けながら激しくジェームズを追い込んでいく姿は、非常にショッキングでした。
肉体への攻撃は勿論、ジェームズの作品を批判する書評を皆の前で読み上げたり、ジェームズ自身の手でジェームズ(クローン?)を殺すように誘導したりと、精神攻撃のやり方がえげつないです。
そんな彼女の倫理観の無さを「ガビもクローンだからではないか」と理由付けする解釈もあるようですが、ジェームズの心の折り方を理解し尽くした攻撃の数々を見ていると、オリジナル説もありえそうだと思いました。

女優という職業柄、人間観察が上手いんでしょうか。
謎めいたラスト
これだけやりたい放題やったにも関わらず、休暇が終わった途端、それまでジェームズを玩具にしていた金持ち達は、平然と帰国して日常へと戻っていきます。
ガビも例外ではなく、いままでの過激な言動が嘘だったかのように、ジェームズに「また来年」と別れを告げて帰国します。

というか、来年もクローンで遊ぶこと前提なんですね……。
しかしジェームズだけは、何故か呆然とした様子でそのまま島に残ってしまいます。
そのまま映画は終わってしまうため、これが何を意味しているかは完全に観た側の解釈次第となります。

映画初心者には解釈が難しい!
ガビの誘導によってジェームズ自身の手でジェームズ(クローン?)を殺すまでは、彼女達から逃げて帰国しようとしていたので、おそらくここがキッカケだったのでしょう。
自分自身のクローンとは言え、殺人に手を染めてしまった自分に耐えられなかったのか、それともどちらがオリジナルなのか分からなくなって自分を見失ってしまったのか。
呆然とした様子からはそんな印象を受けました。

この経験を糧にスランプを乗り越えて欲しいですが、そんなポジティブな雰囲気ではなさそうなのが辛い所です。
最後に
前情報をあまり入れなかったため、なんとR18指定作品だった事に気付かないまま観てしまいました。
そのため過激なエログロ描写のてんこもりに衝撃を受けましたが、中でもやはりミア・ゴスの怪演は2度と忘れる事が出来なそうです。
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