【感想】「レモンと殺人鬼(くわがきあゆ)」どんでん返しと予告されているのに驚いてしまう『このミス』大賞シリーズ

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ミステリー

この記事では『レモンと殺人鬼』のあらすじや感想を紹介していきます。

歯並びが悪い事に強いコンプレックスを抱き、常にマスクで顔を隠し続ける主人公・美桜。
偶然なのか意図的なのかは分かりませんが、本の帯で美桜らしき人物の口元だけ隠されていたのが印象的でした。

せきゆら
せきゆら

口を閉じて歯の部分は隠してあるため、妹・妃奈の可能性も有ります。

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【レモンと殺人鬼】のあらすじ・登場人物

十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。

しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。

被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行なっていたのではないかという疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。

裏表紙のあらすじより

登場人物(主要人物のみ色付き)
小林美桜……主人公。大学の事務員。
小林妃奈……美桜の妹。保険外交員。
小林恭司……美桜の父。洋食店経営。
小林寛子……美桜の母。

蓮……恭司の洋食店に度々訪れる少年。
佐神翔……恭司を殺害した犯人。刑期を終えて出所する。

桐宮証平……農学部の大学院生。
海野真凛……大学生。
渚丈太郎……経済学部の大学生。
鹿沼公一……美桜の同僚。

銅森一星……経営者。妃奈の元交際相手。
金田拓也……銅森の用心棒。同級生でもある。
水戸……『週刊リアル』の記者。
川喜多弘……妃奈の交際相手。

【レモンと殺人鬼】はどのような人にオススメ?

・どんでん返しが見たい人
・複雑なストーリーや謎を読み解きたい人
・サイコサスペンス要素が好きな人

どんでん返し×サイコサスペンスを組み合わせた事により、話に動きが多く読んでいて退屈しません。
謎解きはあらゆる手法で複雑化されているものの、大筋の流れは分かるようになっています。

せきゆら
せきゆら

ページ数も302ページと少なめで文章も読みやすいため、小説を読み慣れていない人にもオススメしやすい作品だと思いました。

ネタバレ注意【レモンと殺人鬼】の気になった点

読了された方向けの内容となっておりますので、未読の方はご注意ください。

『殺人鬼』は誰を指している?

平気で殺人をすることのできる人間を、鬼にたとえていう語。

殺人鬼-Wikipedia

はじめは普通に逸夫の事だと思っていましたが小林姉妹、翔、渚、銅森(間接的)等、殺人を犯す人物がきわめて多い本書は全員ひっくるめて「殺人鬼」を指していたように思えます。
小林姉妹や銅森は元々虐げられる側にいたものの、一転して虐げる側に回ってからは殺人に罪悪感を感じる描写がまったく出てこないため、意図的に殺人鬼というタイトルに寄せているように感じました。

連続どんでん返しを可能にした殺人鬼達

何故本書はここまで殺人鬼だらけなのか。
瀧井朝世の解説によると、著者は「あらゆる『あかん人(=ヤバイ人)を登場させてみようと思いました」と話していたようです。

更に殺人鬼達のほとんどはミスリード要員であり、
『どんでん返しでその本性が明らかになるとそのまま退場→すぐに次のミスリード要員の驚くべき本性が明らかになりそのまま退場』
という流れを繰り返す事で、本書最大の見所であった連続どんでん返しを可能にしていました。
しかし彼らがその後どうなったのかは一切描かれないため、どんでん返しのために登場人物を使い捨てているように感じてしまった部分もあります。
特に渚は潜入していた理由どころか、本名すら判明しないまま終わったため余計気になってしまいました。

せきゆら
せきゆら

渚だけで1つの話が出来そうな設定の濃さでしたね。

桐宮は結局誰だったのか

叙述トリックによるミスリードで混乱しますが、彼はストレートにそのまま桐宮証平本人でした。

「蓮」の正体ではありますが、これは桐宮の名前を知らなかった妃奈が内心好きなアイドルの名前で呼んでいただけなので、本当の名前ではないです。

美桜(本当は妃奈)に恋愛感情を抱いているように見えた描写も、後に逸夫が妻との馴れ初めを語る場面であった事が発覚するため、桐宮は関係ありません。

彼の目的は、不遇な幼少時代を送った美桜を「虐げられる子供の象徴」として救う事でした。

結果、渚から美桜を救う事には成功しましたが、来たタイミングがあまりにも悪すぎたため、逸夫から不意打ちを受ける羽目になります。
桐宮を倒した逸夫の「彼も斬って自殺に見せかけよう」という発言から、まだ殺されてはいなかったようですが、それはそれで美桜が手を汚す事で守られる形となってしまった彼の心中は穏やかではなさそうです。

最後に

中盤まで気弱な美桜が散々理不尽な目に遭う姿を見せられるため、最後はスカッとさせて欲しいと思いながら読んでいました。
しかし終盤から、突如殺人鬼達が次々とサイコパスな思想を語りながら覚醒し始めるので、これまでのストレスが別の意味で吹っ飛びます。

もういっそ逸夫と渚をぶつけて対消滅させればいいんじゃないか、と考え始めた所でついに美桜も覚醒するため、読後は謎の爽快感がありました。

せきゆら
せきゆら

バッドエンドかハッピーエンドなのかは、読み手によって解釈が分かれそうです。

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