【感想】「変な家2〜11の間取り図〜(雨穴)」全ての間取り図を解いた先に待つ真相とは?!

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ミステリー

この記事では映画『変な家2〜11の間取り図〜』の紹介や感想を書いていきます。
変な○シリーズの感想記事はコチラから↓

変な家
変な家(映画)
変な絵

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【変な家2〜11の間取り図〜】のあらすじ

雨穴最新作!『変な家』第2弾!
14万字超、完全書き下ろし!
あなたは、この「11の間取り」の謎が解けますか?
前作に続き、フリーライターの筆者と設計士・栗原のコンビが
不可解な間取りの謎に挑む。
1「行先のない廊下」
2「闇をはぐくむ家」
3「林の中の水車小屋」
4「ネズミ捕りの家」
5「そこにあった事故物件」
6「再生の館」
7「おじさんの家」
8「部屋をつなぐ糸電話」
9「殺人現場へ向かう足音」
10「逃げられないアパート」
11「一度だけ現れた部屋」
後編「栗原の推理」

すべての謎が一つにつながったとき、きっとあなたは戦慄する!

飛鳥新社HP 内容紹介より

2年前『変な家』という本を書いた筆者。
これが大きな反響を呼んだ結果、筆者の元には100を超える変な家の情報が寄せられました。
そのほとんどはまだ謎が解明されていない家ばかり。
筆者はそんな家の「オチ」を知るべく、変な家の取材を続行します。
しかし取材を進めるうちに、得られた情報から奇妙なつながりが見え始め……。

【変な家2〜11の間取り図〜】はどのような人にオススメ?

・前作『変な家』を読み、より多くの間取りの謎に挑戦したいと思った人
・不気味で後味の悪い読後感を味わいたい人
・連作短編集(全体を通して見ると、1つの物語に繋がる短編集)が好きな人

Amazon等で前作のレビューを覗いてみると「もっと多くの間取り図を見てみたかった」という感想がちらほら見られました。
そんな声が届いたのか、今作では11もの間取り図が登場します。
中には水車小屋等の変わり種もあるため、読んでいて飽きません。

これに伴い構成も連作短編集へと変更され、ページ数も244ページ(前作)から446ページにボリュームアップ。

しかし不気味な読後感は今作も健在であるため、前作が刺さった人には今作もオススメ出来る作品となっています。

せきゆら
せきゆら

※今作は子供に対する暴力的な表現が多く含まれておりますので、苦手な方はご注意ください。

【変な家2〜11の間取り図〜】の各短編紹介・簡単な感想

真相のネタバレはしていませんが、話の中身にはざっくりと触れているため、未読の方はご注意ください。

1「行先のない廊下」
相談者が子供時代に住んでいた家には、何故か行き止まりの廊下があった。
この理由に自身の家庭事情が関係があると見た相談者は、想いを誰かに打ち明けたい一心で筆者の元を訪れる。

話としては一応解決に向かったものの、まだ1番目のストーリーなので謎を残したまま終わってしまいます。
真相を知った上で改めて読み返したい作品です。

2「闇をはぐくむ家」
2020年、16歳の少年が祖母・母・弟を殺害する事件が発生する。
「当時、彼らが住んでいた一軒家の間取りに問題があった」
そんな噂を聞いた筆者は、事件現場に立ち入った特殊清掃業者に取材する。

「同じ間取りの家が100軒以上存在していて、この家でしか殺人事件が起きていないなら、間取りではなく家族仲の問題なんじゃ……」
という突っ込みはあったものの「間取りが起こす殺人事件」というテーマ自体は奇妙な魅力があって面白かったです。
余談ですが、特殊清掃業者のおじいちゃんが良い味出してました。

3「林の中の水車小屋」
かつて製鉄業の一角を担っていた財閥の娘が、叔父の家に滞在していた際、謎の水車小屋に出会う話。

紀行文集から抜粋された話であるため、これまでの短編とは全く雰囲気が違います。
先述しましたが、間取り図も一軒家のものではなくまさかの水車小屋です。
しかしその分間取りがコンパクトで一軒家ほど複雑ではなかったため、話が頭に入ってきやすかったです。
明るい内容ではない話でこのような感想を持つのは良くないかもしれませんが、仕掛けが大掛かりでロマンがありました。

4「ネズミ捕りの家」
筆者はとある豪邸で起きた事故について、当事者の女性にインタビューを行う。
彼女は過去の事故について独自の推理を持っており……。

一見、いつも通りのインタビューに見えますが2「闇をはぐくむ家」で触れられていた内容が出てきます。
このあたりからいよいよ連作短編集らしい繫がりが見えてきてワクワクしてきました。

5「そこにあった事故物件」
筆者の元へ相談に訪れたのは、山間部に家を購入した会社員の男性。
ある日彼がスマホを見ていると、自身の家がいわくつきスポットとして紹介されていたため、不安になったという。

本書でこれまでありそうでなかった事故物件の話。
「田舎の山間部」という人が少ない場所が舞台となっているのもあいまって、より不気味な雰囲気が出ていました。
過去の短編に出てきた間取りの解答編にもなっているため、素直に順番通り読む事をオススメします。

6「再生の館」
とある記者がカルト教団「再生のつどい」の宗教施設に潜入した時のレポート。
本来は前後編に分かれていたが、後編はとある事情で掲載されなかったため、現存しているのは前編のみ。

某月刊誌に掲載されていた記事の抜粋。 
「そんな間取り有りなの?!」と色んな意味で驚かされる作品でした。
ようやくこの話で問題の全体像が掴めたような気がします。

7「おじさんの家」
母と「えいじさん」から虐待を受けていた少年が、亡くなる直前まで書いていた日記。

いつものような間取り図ではなく、文章から間取りを推測しなければいけない特殊な短編。
更に子供目線の文章である事から、意図的に分かりづらい説明がなされており、実際に間取りを再現するのは困難です。

8「部屋をつなぐ糸電話」
筆者はとある女性が、子供時代に経験した近隣の火事の話を聞くために取材を申し込む。
彼女は事件当時、自分と糸電話をしていた父親が一連の犯人であると疑っており……。

「それだけ糸電話を使っていて、どうして他の家族や外の住民に目撃されていない?!」
とつい突っ込みたくなる話。
しかし糸電話の長さと間取りを照らし合わせ、父が糸電話を持っていた場所を割り出す謎解きは斬新で面白かったです。

9「殺人現場へ向かう足音」
引き続き筆者は、かつて火事が起こった家に住んでいた当事者の男性にも話を聞きに行く。
しかし彼もまた、自分の父親を犯人と疑っていた。

8「部屋をつなぐ糸電話」の続編。
糸電話から火事の真相を推理した近隣女性に対し、こちらは火事が起こる直前、上の階から聞こえた足音の方向を元に推理をしているのが特徴です。
このあたりからようやく「親に関する話が多いな」と気づき始めました。

10「逃げられないアパート」
今回筆者が取材を申し込んだのは、昔「置棟」というアパートへ息子と連れてこられた過去を持つ女性。
しかし筆者は彼女の話の内容に違和感を感じていた。

ある重要人物の過去が明らかに。
しかしただの過去編だと思い油断しながら読んでいると、後々どんでん返しでやられます。

11「一度だけ現れた部屋」
筆者が過去に仕事で関わったフリーデザイナーから
「実家にいた頃、何故か目眩がした次の瞬間、謎の部屋が現れた。
夢かと思っていたが筆者の『変な家』を読み、あれは親の隠し部屋ではないかと疑うようになった」
と相談を受ける。

「隠し部屋を探す」という『変な家』らしいストーリー。
ストレートですが、やはりこの手の話は何度見てもワクワクさせられました。
しかし隠し部屋ばかりに気を取られていると、思わぬ方向から殴られます。

後編「栗原の推理」

11もの資料を読み終えると、満を持して設計士・栗原が登場します。
今回は推理に必要な要素を筆者がすべて集め終えてから、栗原が謎が解くという構成になっているため、すべての短編を読み切るまで彼は登場しません。

せきゆら
せきゆら

ノリノリで不謹慎な推理をする栗原が好きだった私は「早く栗原さんを!」と終始急かしながら読み進めてしまいました。

栗原は探偵役に近い立ち位置なので、全く出てこないと物足りなさを感じますね。

しかし後半まで出番が無いのと引き換えに、栗原の推理パートは登場から100ページ以上にわたり展開されていきました。
それぞれの短編で出た情報を図で分かりやすくまとめてくれているため、冗長にならずこのパートは非常に読みやすかったです。

それに、なんだかんだで今回も不謹慎な推察をする栗原が見られて満足でした。

せきゆら
せきゆら

後味の悪さが魅力の本書と、容赦なく真実を暴く栗原は相性が良いですね。

最後に(ネタバレ注意)

前作と違い、今回は悪者側?の人間がある程度擁護出来る人物ばかりでした。
その分真実を暴いてもスカッとする感覚は無いため、より後味の悪さが増しています。(褒め言葉です)

せめて美津子と詩織が和解してくれればまだ救いがあるだろうに……
とは思うものの、詩織の好きな漫画を「貧乏な子が読むもの」と言ってしまった美津子の言葉へ、一切フォローが入っていないのを見るに、和解する流れは無さそうなのが悲しいところです。

というより、そもそも何故美津子は漫画が好きだと嘘をついたのでしょう。
悪意がなかったのを見るに、単に詩織と仲良くなりたくて話を合わせていたのでしょうか。

せきゆら
せきゆら

そこまで重要な問題ではないものの、気になるところです。

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