【感想・ネタバレ】「変な絵(雨穴)」大学時代の栗原が出会った絵の謎

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ミステリー

この記事では『変な絵(雨穴)』のあらすじや感想を紹介していきます。

本書は大人気の不動産ミステリー「変な家」に続いて登場した、スケッチミステリーです。
間取りより絵の方がとっつきやすい……と感じる人には、本書の方が向いているかもしれません。
変な○シリーズの感想記事はコチラから↓

変な家
変な家(映画)
変な家2〜11の間取り図〜

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【変な絵】のあらすじ・登場人物

あなたも、何かがおかしい9枚の絵の「謎」が解けますか? 
とあるブログに投稿された『風に立つ女の絵』、消えた男児が描いた『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、山奥で見つかった遺体が残した『震えた線で描かれた山並みの絵』……。
いったい、彼らは何を伝えたかったのか――。
9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!? 
その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる!

Amazon紹介ページより

登場人物

プロローグ
萩尾登美子……心理学者。

第1章 風に立つ女の絵

佐々木修平……大学生。オカルトサークル所属。 
栗原……大学生。佐々木が所属するオカルトサークルの後輩。

七篠レン……ブログの管理人。 
ユキちゃん……彼のブログに登場する妻の呼び名。 

第2章 部屋を覆う、もやの絵

今野優太……保育園児。
今野武司・今野直美……優太の保護者。 
春岡美穂……優太の保育士。
米沢美羽……優太と同じクラスの友達。
米沢……美羽の父親。妻が末期がんで入院しているため、美羽の育児は彼が行なっている。
灰色のコートの男……優太と直美の後をつけてくる謎の人物。

第3章 美術教師 最期の絵 

岩田俊介……L日報に入社した新人社員。
熊井勇……岩田の教育係。 
三浦義春……美術教師。山登りの最中、惨殺される。
亀戸……三浦が担当していた美術部の教え子。事件の容疑者候補。
豊川……三浦の友人。事件の容疑者候補。
三浦の妻……事件の容疑者候補。
丸岡……三浦の後を引き継いだ美術部の顧問。

【変な絵】はどのような人にオススメ?

・絵から謎を解くミステリーに興味がある人
・連作短編集が好きな人
・元動画であるこの絵の仕掛けが解けますか?『変な絵』 第1章の真相が知りたい人

【変な絵】の感想

元動画と書籍版の違いは?

「変な家」同様、本作もホラー作家兼YouTuberである雨穴さんの動画(先述)が元となっています。
動画は「第1章 風に立つ女の絵」で終わりますが、書籍版ではその真相が明かされる最終章まで描かれています。

しかし元動画と書籍版で話の導入が異なっており、元動画では雨穴さんが「知人(栗原さん)からあるブログについて教えられた」という導入で話が進んでいくのに対し、書籍版では栗原さんがブログを見つけた大学時代の話となっていました。
彼が所属するオカルトサークルの先輩・佐々木修平に例のブログの存在を伝えるところから物語は始まります。
時系列的にはまだ栗原さんが建築士になる前の話であり、元動画でも「建築学部の学生だった頃の話」と言及されているため「変な家」の前日譚に近い位置づけなのかもしれませんね。
そのため元動画と違い、書籍版では雨穴さんの登場はありませんでした。

せきゆら
せきゆら

栗原さんも出番そのものは非常に少ないため、2人のかけ合いを楽しみにしている方にはややオススメしづらい作品かもしれません。

ネタバレ注意!!各短編感想

ネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。

プロローグ

心理学者・萩尾登美子は大学の講義にて、ある少女が描いた「文鳥を守る樹の絵」を紹介する。少女は虐待を行なう母親を殺害してしまったらしいが……。

今回も話が連動する連作短編集だと知らなかったため「この作品ではこういうやり方で絵の謎を解いていきますよ」というチュートリアル的なものだろうと思っていました。
読後に見てみると見方がまったく変わりますね。

第1章 風に立つ女の絵 

大学生の佐々木はオカルトサークルの後輩・栗原から七篠レン 心の日記というブログを紹介される。
そこには意味深な内容と5枚の絵が投稿されていた……。

先述の通り、動画化されている章。
この章は知っているという人も多いでしょう。
ストーリー内に登場するブログまでネットに存在しているという驚きの仕様です。
オチは元動画と同じですが、栗原さんの「私は当時5分で解けたので、雨穴さんなら20分あれば出来るんじゃないですか」という煽りが書籍版で見られない事だけが残念です。

第2章 部屋を覆う、もやの絵

優太の保護者・今野直美は、保育士の春岡美穂に呼び止められる。
どうやら優太がお絵かきの時間に妙な絵を書いたらしく……。

一見第1章と関係ない物語が始まったかのように見えましたが、ラストでしっかりと話が繋がりました。真相を知った上で改めて読んでみると、直美は元々由紀個人にさほど嫌悪感を抱いていなかったにも関わらず、妊娠したあたりから一転、忌々しい存在として扱い始めた所に「母親の座をおびやかす者は誰であろうと許さない」という意思が垣間見えてゾッとしますね。
墓まで家族と引き離すほどの徹底ぶりです。
直美の中で、由紀だけは私欲のために殺してしまったという認識を持っているようなので、その後ろめたさもあったのでしょうか。

第3章 美術教師 最期の絵

山中で惨殺された美術教師・三浦義春。
事件は迷宮入りとなってしまったが、彼を恩師と慕う元教え子・岩田は犯人を見つけるため記者を志し、L日報へ入社する。

ベタですが3人の犯人候補から三浦殺しの犯人を当てるというミステリーらしい構成だったので、1番ワクワクさせられた章でした。
岩田が亀戸に「自分も三浦と同じ山を登りに行く予定だ」と話した所で何となく察しがついてしまいましたが、その先の展開は予想を半分裏切るものとなっていて面白かったです。

最終章 文鳥を守る樹の絵

真相へ到達した熊井の罠にかかった直美は、ついに警察に捕まる。
牢屋に入れられた彼女は、これまでの過去を振り返る。

自身への虐待だけでなく、愛するペットの文鳥まで手にかけようとする母親を殺害した事が、直美の中で「子供(文鳥)を守る事が出来た成功体験」となってしまっていたのでしょうか……。
その危険性は、彼女が描いたというプロローグの「文鳥を守る樹の絵」に表れていましたが、絵を別の解釈で読み解いてしまった心理学者・萩尾登美子により「更生の余地アリ」と診断されてしまいます。

せきゆら
せきゆら

情状酌量の余地があったとはいえ「1枚の絵だけでそこまで判断したのは軽率すぎないか?!」と思わずツッコんでしまいました。

米沢は何者だった?

※こちらはあくまで私の考えなので、実際にそのような意図があったのかは不明です。


「第2章 部屋を覆う、もやの絵」に少しだけ登場した後、意外にもラストで物語の締めくくりを担当した美羽の父・米沢。
彼は結局どのような立ち位置だったのでしょうか。

おそらくですが第2章では「灰色のコートの男=米沢」であるとミスリードさせる役目があったと思われます。
「灰色のコートの男」の正体は第3章で初登場する熊井なので、この時点では当てようがありません。
そのため読んでいる最中は、第2章唯一の男性である米沢しか疑えない状況になっていました。

せきゆら
せきゆら

墓地のおじさんも男性ですが、そもそも優太が迷子にならなければ出会う事も無かった人物なので、やはり米沢に疑いが向いてしまいます。

その一方でラストシーンの米沢は、親としての在り方が歪んでいた今野親子や三浦と対極の存在として描かれていたように見えました。

子供を守るため、そして自分が母親で在り続けるために殺人を繰り返した直美。
虐待を重ねた結果、娘が殺人鬼になるきっかけを作ってしまった直美の母。
自分の価値観を絶対的な正義とし息子にもそれを押し付けた結果、直美の標的となってしまった三浦。

このままいけば優太も今野家の歪みに巻き込まれてもおかしくない所でしたが、最後に米沢達と家族のように明るくバーベキューをするシーンで、その歪みから解き放たれたように見えます。

「それなら米沢より、優太と養子縁組した熊井の方が良かったのでは?」とも思いましたが、熊井は自分が直美を捕まえた事で優太を身寄りの無い子にしてしまった罪悪感と、栗原の「自分が事件の情報提供をするのと引き換えに、優太の世話をしてあげて欲しい」という取引に応じた事から養子縁組を決めたばかりであるため、優太と家族らしい時を過ごすにはまだ時間が足りなかったように見えます。
そのため元々優太と付き合いがあり、子を持つ親目線で語れる米沢が対極の存在としてラストを飾る方が、話としては綺麗にまとまっていて良かったと思います。

最後に

最後は熊井の活躍や米沢の存在により、ポジティブな話になったせいか読後感は良かったです。
忘れた頃にやってきて、ちゃっかり優太と熊井を養子縁組させた栗原も良い味出してましたね。

せきゆら
せきゆら

「変な絵」も続編待ってます。


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