【感想】「生首に聞いてみろ(法月綸太郎)」石膏像の首がもたらす真実

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ミステリー

この記事では「生首に聞いてみろ(法月綸太郎)」のあらすじや感想を紹介していきます。

本書は、作者の名前をそのまま主人公に名付けた「法月綸太郎シリーズ」の第10作目だそうです。
それを知らずに私は本書からこのシリーズに入ってしまいましたが、それでも十分に楽しめます。

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【生首に聞いてみろ】のあらすじ・登場人物

首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する—著名な彫刻家・川島伊作が病死した。
彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。
悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。
三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は—!?
幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。

「BOOKデータベース」 より

登場人物(主要人物のみ)
法月綸太郎……小説家
法月警視……綸太郎の父

川島伊作……彫刻家、故人  
川島江知佳……伊作の娘 
川島敦志……伊作の弟、翻訳家 
川島律子……江知佳の母
川島結子……順一の前妻、故人
各務順一……歯科医師 
国友レイカ……伊作のパートナー
宇佐見彰甚……美術評論家 
堂本峻……カメラマン
田代周平……カメラマン、綸太郎の後輩
飯田才蔵……フリージャーナリスト

【生首に聞いてみろ】はどのような人にオススメ?

・読み応えのあるミステリーを読みたい人
・美術関係の知識がある人
・超人的な探偵よりも、試行錯誤するタイプの探偵が好きな人

ネタバレ注意【生首に聞いてみろ】の感想

ネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。

あえて万能ではない探偵

私はそれほど多くのミステリーを読んできた訳ではありませんが、本書の探偵役・法月綸太郎はこれまで見てきた探偵役の中でも失敗を繰り返す姿が印象的でした。
彼は推理をミスする事もあれば、事件を阻止するチャンスをふいにする事もあります。
はじめは自身の名前をそのまま使った登場人物を「万能な名探偵」として描くのに抵抗があったのかと思いましたが、巻末のインタビューによると、これは作者が好んでいた探偵像だったそうです。

僕は昔から事件の概要を知った瞬間にすべてわかっちゃう超人的な名探偵よりも、「ああでもない、こうでもない」って、しょっちゅう間違えるような探偵が好きなんです。
可能性をつぶしていって、最終的には解決するというタイプの探偵ですね。

法月綸太郎

よくよく考えてみると、どんな名探偵であろうと事件を阻止する事は出来ない(阻止すると作品が始まらない)ので、あえてそれを「失敗を繰り返しながら、正解へ近づいていく探偵」の要素として取り込んだのは、人間らしさも引き出されていて良い設定だと思いました。
更に推理ミスもする事で「探偵役だからすべての推理が信頼出来る」というメタが通じないのも面白かったです。
これで本業が探偵や警察だと頼りなさがあったかもしれませんが、法月自身はあくまで民間人なのがまた丁度良いさじ加減になっていたと思います。

犯人について

犯人の人選は直球勝負であったと同時に、驚きの引っ掛けも待っていました。
双子ならまだしも、さすがに姉妹での入れ替わりは不可能だと思い込んでしまっていたので、まんまと騙されてしまいましたね。

ちなみに途中まで私は、堂本の消息について知る手段を持っている上、江知佳に憧れられている田代が犯人だと思ってしまいました。
堂本に関する調査は完全に田代任せだったので、田代が堂本と組んでいれば良いようにごまかしてくるでしょうし、自身のファンである江知佳を無警戒のまま呼び出せる人物でもあるので辻褄が合うのではないか、と。
しかしそんな私の浅はかな推理はお見通しだったらしく、かなり序盤の段階から田代&堂本共謀説について言及されてしまいました。

せきゆら
せきゆら

別の可能性から潰していく法月のやり方は、読み手の推理も容赦なく全否定してきます。

□すぎる読後感

トリックを成立させる上で必要な要素が、被害者へ惨い仕打ちをするものになっていた事。
事件を阻止するどころか逆にトリックとして利用されてしまっていた事。
そしてラストを締めくくる敦志の「誤解が解けた事によってこんな結果になるぐらいなら、兄(伊作)とは絶交したままでいれば良かった(要約)」という一言の重さによって、あまりにも苦すぎる読後感となっています。
さすがにこれには「和解した事ではなく、よく話し合わなかった事を後悔してくれ!」と言いたくなりましたね。

せきゆら
せきゆら

誤解が解けないままだと、律子が受けた仕打ちが明らかにされないまま犯人が勝ち逃げしてしまうので、これはこれで最悪です。

特に今回起きた一連の事件は、いくつもの誤解と偶然で何とか成立した事件だったので、読んでいる側としては余計に歯がゆさを感じさせられます。
あのときちゃんと名前を出していれば。あのタイミングで〇〇に相談していれば……と、意味は無いと分かっているものの、ついあれこれとIFを想像してしまいました。

最後に

十分楽しませていただけたとはいえ、法月周辺の人間関係がよく分からないまま読んでしまったのは流石に惜しかったので、他のシリーズ作品も読んでみたいと思います。

せきゆら
せきゆら

地味に「顎髭キューピー」こと飯田が好きだったのですが、他のシリーズ作品にも登場するのでしょうか。

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