この記事では「殺人鬼フジコの衝動」「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」(真梨幸子) のあらすじや感想を紹介していきます。
当初は「殺人鬼フジコの衝動」のみを読もうと思ったのですが、あまりにも続きが気になる終わり方だった上、実質「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」と合わせて上下巻の構成と言っても良いレベルの内容だったため、急遽合わせて読む事にしました。
【殺人鬼フジコシリーズ】のあらすじ・登場人物
一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。
だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。
「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。
呟きながら、またひとり彼女は殺す。
何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。
最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…。「BOOKデータベース」 より
登場人物(一部のみ)
森沢藤子……殺人鬼フジコ
森沢遼一……藤子の父親
森沢慶子……藤子の母親
森沢沙織……藤子の妹
下田茂子……藤子の叔母
【殺人鬼フジコシリーズ】はどのような人にオススメ?
・イヤミスが好きな人
・暴力表現が多く含まれる作品に耐性がある人
・犯人当てや物理トリックではない方向のミステリーを求めている人
【殺人鬼フジコシリーズ】の感想
ネタバレが含まれる部分がありますので、閲覧の際はご注意ください。
ネタバレ無し:2作の関係性は?
「殺人鬼フジコの衝動」はフジコの一生を記録した小説という形式で描かれています。
その一方で「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」は、ある人物が起こした事件の真相について、その関係者にインタビューを行なう記者側の視点から迫っていく内容となっていました。
「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」のあらすじは、個人的にネタバレ要素が強いと感じたので、詳細は伏せておきます。
一見、別物の続編であるかのような始まり方をする2作品ですが、読み進めてみると「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」は「殺人鬼フジコの衝動」を読んでいる事を前提とした構成である事が分かります。
その上で「殺人鬼フジコの衝動」ではハッキリしていなかった真相を明らかにしているため、別物の続編というよりは上下巻セットのような構成だったように思いました。
間違っても「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」から読んではいけません。
ネタバレ有り:サイコサスペンス要素強めかと思いきや…
どちらの作品も、ある殺人鬼の起こした事件とその人生を追いかけていく構成となっております。
実行犯は隠す気がありませんし、犯行方法に関する謎解きもありません。
そのため終盤までは本当に彼らの一生を辿っていくサイコサスペンスなのかと思っていました。
しかしどちらの作品も最後の最後で、驚きの真実が判明します。
特に「殺人鬼フジコの衝動」の方は、話の根底そのものを覆しかねない真実だった分、衝撃が大きかったですね。
あのタイトルの伏線といい、記録小説という形式ならではの仕掛けが面白かったです。
また「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」も、前作を読んだ直後だったにも関わらず『みっちゃん』の正体にまったく気づいていなかったため『私は、ある重大な事実を確認するために、下田茂子と小坂初代に会う段取りをつけていました』という部分を読んだ瞬間、一気に鳥肌が立ちました。
1文字目が最初からハッキリ分かっていても、案外気づかないものですね。
『みっちゃん』の正体が前作のあの人?!と判明するシーンが個人的に1番盛り上がった部分なので、やはりこの2作は同時に読んで正解でした。
ネタバレ有り:イヤミスらしいラスト
ラストはついに、すべての殺人鬼に決着をつけた……かと思いきや、殺人鬼の血は美也子へ引き継がれていたという、イヤミスらしい終わり方をしました。
『事件唯一の生き残り』という立場を最大限に利用してくるところも、母親の藤子を思い出します。
とはいえ美也子の場合、元凶である下田健太があまりにも凶悪すぎた上、証拠不十分で彼の無罪判決が確定、再び美也子が狙われるのも時間の問題、という絶望しかない状況を考えると、彼女の行動は普通の人間でもやりかねないように見えてしまい、まだ殺人鬼の血を原因とするには早すぎるのではないかとも思いました。
勿論やった事は容認しませんが、サツキに有利となる証言を積極的にしているだけ、散々他者を使い捨ててきた茂子や健太よりは、まだマトモに見えてしまいます。
そんな美也子も、ここからエスカレートして一気に殺人鬼へと変貌していくのでしょうか。
最後に
はじめは中身をよく知らないまま手に取ったので、想定以上の暴力・グロテスクな描写の多さに驚かされました。
しかし登場人物に感情移入させる構成ではなかったおかげか、イヤミスの中でもかなり後味が悪い作品であるにも関わらず、不思議とサクサク読み進める事が出来ました。