この記事では「グリーン家殺人事件(S・S・ヴァン・ダイン)」のあらすじや感想を紹介していきます。
同シリーズの「僧正殺人事件」を読んだ後、同じく名作として有名な本書の存在も気になってしまい、手に取りました。
【グリーン家殺人事件】のあらすじ・登場人物
発展を続けるニューヨークに孤絶して建つ、古色蒼然たるグリーン屋敷。
そこに暮らす名門グリーン一族を惨劇が襲った。
ある雪の夜、一族の長女が射殺され、三女が銃創を負った状態で発見されたのだ。
物取りの犯行とも思われたが、事件はさらに続き…。
不可解な謎が横溢する難事件に、探偵ファイロ・ヴァンスが挑む。
『僧正殺人事件』と並び称される不朽の名作が、新訳で登場!「BOOKデータベース」 より
登場人物
ファイロ・ヴァンス……アマチュア探偵
ジョン・F・X・マーカム……ニューヨーク州地方検事
グリーン家
トバイアス・グリーン夫人……主人
ジュリア・グリーン……長女
シベラ・グリーン……次女
アダ・グリーン……末女、養女
チェスター・グリーン……長男
レックス・グリーン……次男
アーサー・フォン・ブロン……かかりつけの医師
スプルート……執事
マンハイム……コック
ヘミング……女中頭
バートン……女中
クレーヴン嬢 ……看護婦
警察関係者
オブライエン……警部監
アーネスト・ヒース……部長刑事
スニトキン……刑事
バーク……刑事
ドアマス……検死医
【グリーン家殺人事件】はどのような人にオススメ?
・ミステリー初心者の人
・あらゆる名作を生み出す原型となった作品を読みたい人
・推理難易度が易しめの作品を読みたい人
【グリーン家殺人事件】の感想
ネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください
ネタバレなし:ミステリー初心者向け
本書は、後世に続くミステリー小説の原型ともいえる要素が多く含まれています。(ネタバレになるため、詳細は下記参照)
そのためヴァンスの長すぎるウンチクなど読みづらい部分はあるものの、ミステリー初心者の方が最初に読むには丁度良い作品なのではないかと思いました。
何よりヒントがしっかり出されているため、普通に謎解きを楽しめます。
更に読後、他の方の感想を見てみると、その有名さ故に「他作品を読んでいたら本書の犯人をネタバレされてしまった」という人がちらほらいたので、いつかその作品にぶつかる前に読んでおいた方がよさそうです。
まだ犯人を知らない段階で読めた私は幸運でした。
ネタバレ注意:あらゆる名作の元祖?!
以前「僧正殺人事件」を読んだ時、そのラストシーンを見て、ある作品の結末を思い出したのですが「グリーン家殺人事件」も、そのストーリーや舞台等の設定から、奇しくも同じ作品を連想しました。
同じ指摘をする感想も多かったため、気になる方はネット検索をすれば何の作品かすぐに分かると思います。
他にも不思議な遺言状や遺産を巡る殺人劇は犬神家の一族を思い出しますし、もっと広げていうなら「同じ建物内で連続殺人が起こる館モノ」としても、様々な作品が連想出来ます。
しかし刊行年を調べてみると、どの作品も「グリーン家殺人事件」よりも後に刊行された事から、本書があらゆる名作を構築する要素を最初に持っていた事が分かり、非常に驚かされました。
「僧正殺人事件」が見立て殺人の元祖として有名である事は知っていましたが、本書もまたミステリー小説において重要な意義を持つ作品だったのですね。
そうと知っていれば、これまで読んできた作品に対して、また別の見方も出来たかもしれないので「もっと早く読めば良かった!」と後悔せざるおえませんでした。
ネタバレ注意:推理難易度は易しい
「僧正殺人事件」同様、今回も容疑者候補の中からバンバン犠牲者が出てくるので、犯人当て自体は難しくない方だったと思います。
むしろそこから生き残った容疑者候補を見て「もうアダぐらいしか、オチに持ってこられる人がいないな……」という形で透けます。
しかし私は「アダが自分で背中を撃ってからどうやって拳銃を隠せるのか」
「間違いなくヴァンス達とアダが一緒にいたタイミングでレックスが殺された事にどう説明をつければ良いのか」の2点が分からず、結局気持ち的な疑いしか持つ事が出来ませんでした。
正直、拳銃の隠し場所に関しては「何で警察はそこを見てなかったんだ?!」といまだに納得がいっていない部分があります。
とはいえ終盤にヴァンスがグリーン家の情報を簡潔にまとめてくれた箇条書きが分かりやすかったおかげで、マクルートの秘密と犯人の動機には気付く事が出来たのは嬉しかったです。
ネタバレ注意:最後に
シリーズの順番的には「グリーン家殺人事件」の方が先なのですが、私は「僧正殺人事件」から読んだせいか、ラストのアダの自決に対するヴァンスの反応の薄さに、妙な納得感がありました。
「僧正殺人事件」の時は思い切った決断をしたものだと思いましたが「グリーン家殺人事件」の頃から、ヴァンスの犯人の自決に対する考え方はハッキリしていたのですね。
この時から既に「僧正殺人事件」のラストについて、構想があったりしたのでしょうか。