【感想・ネタバレ】今更ながら初めて読んでみた「犬神家の一族(横溝正史)」

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ミステリー

この記事では「犬神家の一族(横溝正史)」のあらすじや感想を紹介していきます。

スケキヨや逆さで池にはまっている姿など断片的に有名な部分はあるものの、内容までは知らなかったため、いよいよ今回手にとってみました。

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【犬神家の一族】のあらすじ・登場人物

犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛が残した遺書。
それによると、遺産は諏訪神社の神主・野々宮大弐の孫娘・珠世が、三人の孫(佐清、佐武、佐智)のうちから婿に選んだものに与えるという…。
莫大な遺産を巡り激しく憎みあう犬神家の人々。
そしてこれは、次々と起こる惨劇の幕開けに過ぎなかった。
犬神家の家宝「斧・琴・菊」と関係づけられた凄惨な連続殺人の数々に金田一耕助が挑む…。
テレビで映画で、常に大ヒットとなった話題のオリジナル作品。

「BOOKデータベース」 より

登場人物(一部のみ)
金田一耕助……私立探偵
古館恭三……古館法律事務所所長、犬神家の顧問弁護士
若林豊一郎……古館法律事務所の弁護士
橘……警察署長

犬神家
犬神佐兵衛……犬神財閥の創始者、故人

犬神松子……長女
犬神佐清……松子の息子

犬神竹子……次女
犬神寅之助……竹子の夫
犬神佐武……息子
犬神小夜子……娘

犬神梅子……三女
犬神幸吉……夫
犬神佐智……息子

野々宮家
野々宮大弐……佐兵衛を拾った恩人、故人
野々宮晴世……大弐の妻、故人
野々宮祝子……娘、故人
野々宮珠世……孫娘
猿蔵……珠世の世話役

青沼 静馬……???

【犬神家の一族】はどのような人にオススメ?

・主人公よりも、一族の人間模様を中心に描いたストーリーに興味がある人
・ミステリーやホラー、サスペンス等の要素が好きな人
・戦後まもない時期(昭和20年代)を舞台にしたストーリーに興味がある人

【犬神家の一族】の感想(以下ネタバレ注意)

犯人等のネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。

文字通り、犬神家の一族が濃すぎる

映像化によって、金田一耕助シリーズの中でも非常に有名となった「犬神家の一族」。
しかし肝心の主人公であるはずの金田一は、他のシリーズ作品に比べるとやや影が薄かったように思いました。

せきゆら
せきゆら

金田一がというより、ゴムマスク姿の佐清に絶世の美女・珠世など、他の登場人物達が濃すぎたからかもしれません。

更に今回もシリーズ恒例のややこしい血縁関係があるため、人物紹介の段階で頭を抱えそうになりかけたのですが、今回は佐清や珠世以外も個性がハッキリとした人物ばかりなので、特徴で覚えやすかったです。
更に青沼のように名前しか出てこないものの、現在犬神家のどこかに紛れこんでいる事を匂わせてくる人物もいるため、どこに彼がいるのかにも終始意識が向いてしまいました。

そのため一貫して影が薄めな金田一ではあるのですが、唯一気になる彼の仕草がありました。
それは犬神家を取り巻く謎に興奮し、頭をバリバリと掻きむしる描写が異様に多かった事です。
確かに金田一耕助といえばフケを飛ばしながら頭を掻きむしる仕草が有名ですが、今回は搔きむしる回数が段違いだったような気がします。
はじめに若林からこの依頼を受けた時は、あまりにも突飛な話で真に受けていなかった金田一。
しかし最終的には犬神家の事情に好奇心を煽られ、依頼を引き受けたという経緯があるため、他の事件よりも高揚していた部分があったのかもしれません。

せきゆら
せきゆら

現場の人間としてはかなり不謹慎ですが、犬神家の謎に引き込まれる気持ちは分からなくもないです。

推理に挑戦してみたものの……

ここからは私の的外れな推理と、大きくハズした記録となります。

「佐清=青沼」までは分かるようにヒント(同い年、宮川への態度等)を出してくれていたので、消去法で「謎の復員兵=佐清」までは何とか気づけました。
しかしこの状況で佐清本人が名乗り出てこない理由が分からず、詰まってしまいます。
正解である「合意の上で入れ替わっていた説」も考えはしましたが、最後に片方が殺される意味が分からなかったので、最終的に入れ替わりはしていないと考えてしまいました。

せきゆら
せきゆら

手形は巻物の方に何か細工をしたのかと思っていましたが、入れ替わりを示唆するヒントだったんですね。

そのため結局私は「青沼の成りすましに偶然気づいた佐清が犯人。この機に乗じて、愛する珠世が自由に好きな相手と結婚出来るよう、結婚候補を殺害して身を引くつもりだった」とこじつけて推理をしてしました。
佐智に眠らされている間、服を剥がされかけていた珠世を助けるどころか、発見者の前で肌を晒さないよう上着までかける配慮をしていたので、彼女のために何でもやれるのは若林や猿蔵と見せかけて……というオチなのかと。
おかげで佐清達の思惑通り、松子にはまったく意識が向きませんでした。

せきゆら
せきゆら

まさか別に真犯人が別にいるとは……。

松子を疑えなかったのは、珠世を救うために佐智を襲撃した佐清が犯人に見えてしまったのと「力が必要な犯行なので、女性では不可能」という先入観があったからです。
後者については、むしろそう思わせるために佐清と青沼で遺体の後処理をしていたとの事だったので、まんまと引っかけられた形になりました。

せきゆら
せきゆら

それにしても、3つ目の殺人(かの有名な逆さ足)はすべて1人で行なったという松子の筋力も相当です。

悪役として〇〇は好きな人物でした

毎回強烈な個性を放つ犯人役ですが、今回の犯人である犬神松子はかなり好きなタイプの悪役でした。
犯人と判明する前までは、性格最悪な人物ではあるものの、それ以上に父親である佐兵衛の不始末が目に余るため「そりゃ性格も歪むか……」と少しだけ同情する程度でした。

せきゆら
せきゆら

美談のように語られている佐兵衛側が悪く見えるのは、刊行当時と現代の感覚の違いからきているのでしょうか。

しかし犯人と判明した際、佐清達と共犯関係ではなかった事に対し「わたしはこんな事件(人殺し)で手を借りようと思う女じゃない。それも相手が息子ならなおさら」と悪役なりの美学のようなものを見せてきたところで、ただ佐兵衛に性格を歪まされただけの端役ではないと気づかされました。

過酷な戦場を生き抜いた強者である青沼が、背中を向けて逃げ出すほどの凄みを見せたり、「私は頭が悪いから、思いつくのに時間がかかった」と謙遜した内容が、本書で最も有名な逆さ足の遺体だったりと、こちらの想定をはるかに超えるラスボスぶりを発揮してきます。

せきゆら
せきゆら

賢さや身体能力では青沼が上かと思うのですが、悪意まみれの犬神家で立ち回るには善良すぎました……。

そして最後は愛する佐清の意図せぬ善意によって、松子の行なった殺人はすべて無意味になったにも関わらず、彼女は冷静さを失わないまま妹達(被害者の親)へ罪滅ぼしに遺産を分け与えるよう指示を出した後、責任を果たすために毒を飲んで死んでしまいます。
この良くも悪くもきっちり筋を通そうとする姿勢は嫌いになれませんでした。
(正直牢屋でちゃんと罪を償うべきだとは思うのですが、本シリーズは犯人を死なせて償わせるパターンが多いので、今回は責任を果たしたと解釈しました)
青沼親子への仕打ちにはさすがに不快感が残るものの、悪役としては非常に気に入った人物です。

せきゆら
せきゆら

佐清を犬神家唯一の人格者として育てあげたのを見るに、松子も家庭環境に恵まれていれば立派な賢人になれていそうだったのが残念なところです。

最後に

今回も話の暗さに反して、思った以上に明るい方向へ話が着地しました。
犯人は死に、話が明るい方向へ向かうのは本シリーズのお約束なのでしょうか。
映像のドロドロとしたホラーのイメージばかりが先行していた分、綺麗におさまった事に驚かされました。

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