【感想】「ボーンヤードは語らない(市川憂人)」マリア&漣シリーズのエピソード0(微ネタバレ有り)

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ミステリー

この記事では『ボーンヤードは語らない』についてあらすじ・感想などを紹介しています。
ネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意くたさい。

マリア&漣シリーズの感想記事はコチラから↓

1.ジェリーフィッシュは凍らない
2.ブルーローズは眠らない
3グラスバードは還らない

4.ボーンヤードは語らない(当記事)

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【ボーンヤードは語らない】のあらすじ

U国A州の空軍基地にある『飛行機の墓場』で、兵士の変死体が発見された。
謎めいた死の状況、浮かび上がる軍用機部品の横流し疑惑。
空軍少佐のジョンは、士官候補生時代のある心残りから、フラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣へ非公式に事件解決への協力を依頼する。

実は引き受けたマリアたちの胸中にも、それぞれの過去—若き日に対峙した事件への、苦い後悔があった。
高校生の漣が遭遇した、雪密室の殺人。
ハイスクール時代のマリアが挑んだ、雨の夜の墜落事件の謎。
そして、過去の後悔から刑事となったマリアと漣がバディを組んだ、“始まりの事件”とは?

大人気シリーズ第四弾は、主要キャラクターたちの過去を描いた初の短編集!

「BOOKデータベース」 より

あらすじにも通り、マリア&漣シリーズ第4作目はシリーズ初の短編集です。
時系列が第1作目『ジェリーフィッシュは凍らない』よりも前である事から、シリーズ恒例の架空技術は登場しません。
そのため今回のみ架空技術を使ったトリックが出てこない、シリーズの中でも異色の作品となってます。

【ボーンヤードは語らない】はどのような人にオススメ?(レビューまとめ)

Amazonレビューでは下記のような感想がありました。

(本文については、レビューを見た私の所感も含まれています)

批判的な意見
・短編なので読み応えはない

・伏線が無い

今作のみ短編集となっているため、過去作の長編に慣れている人の中には「読み応えがなくなった」と感じた人もいたようです。
あくまでシリーズ番外編と割り切って読んだ方が楽しめそうですね。

また謎解きに関しては「伏線がないまま突然、重要な情報を入れてくる」という意見がありました。確かに短編ごとの登場人物が少なく、消去法でも犯人が当てやすくなっていたぶん、真相部分は複雑にされていた印象を受けます。

せきゆら
せきゆら

その一方で、肯定的な意見も紹介します。

肯定的な意見
・主要人物たちの魅力が増した

・続編への期待が高まる

・マリア&漣シリーズの入口としても丁度良い

これまでのマリア&漣シリーズは犯人の過去や動機が話の中心であり、主要人物たちの背景について触れられる機会はありませんでした。
しかし今回はそんな主要人物たちの過去に初めて迫った作品となります。

時系列が過去であるおかげで、これまで登場した事件や架空技術のネタバレはなく、マリア&漣シリーズを知らない人でも読みやすい作品でした。

ジョンとマリア達の具体的な関係については省かれているため、そこで混乱する人は出てくるかもしれませんが、第一作目『ジェリーフィッシュは凍らない』へ話が繋がるように出来ているため、この後に第一作目を読めば十分に理解出来る内容だと思います。

せきゆら
せきゆら

マリア&漣シリーズのファンは勿論、読んだ事がない人にもオススメしたいですね。

【ボーンヤードは語らない】の感想(ネタバレ注意)

感想を述べる上で必要なネタバレをしているため、未読の方はご注意ください。
(犯人の名前は出していません)

ボーンヤードは語らない(ジョン・ニッセン)

マリア達の協力者として、第1作目から毎回活躍してきたジョン。
短編ではありますが、今回ついに主人公兼探偵役(マリア達の助力のもと)に昇格しました。
珍しくジョンの独白も入るため、普段なかなか聞けないジョンの心情を知る事が出来たのは新鮮でしたね。
今回も何故かマリアへの好意を垣間見せるジョンですが、どちらも「いじめに苦しむ友を救えなかった経験が、今の生き方に影響している」という共通点が判明したため、知らず知らずのうちに似た経験を持つマリアに惹かれていてもおかしくはないと思うようになりました。

赤鉛筆は要らない(九条漣)

日本が舞台であり、なおかつ日本人しか登場しない本シリーズ唯一のストーリー。
そのためタイトルも日本語のみで、他のタイトルと比べると目立っていました。
「でもこのストーリー、赤鉛筆が話にまったく出てこないな?」
と思いながら読み進めていると、予想外の形で綺麗にタイトル回収してくれます。

せきゆら
せきゆら

このタイトル回収の鮮やかさから、私はこの短編が一番お気に入りです。

これまで漣に対しては腹の底が読めない人物だと思っていましたが、高校時代からこの性格である事が判明し、ますます漣という人物が分からなくなってきました。
更に語り手も漣ではないため、彼の心情もなかなか読む事が出来ません。
U国に行った理由も判明しなかった事を考えると、漣についてはまだまだ伏せられている秘密が多そうですね。

レッドデビルは知らない(マリア・ソールズベリー)

乱暴な言動が目立つせいか、これまで読み手の評価が分かれやすかったマリアですが、今回そんな彼女の背景に初めて迫るストーリーとなっていたため、読み手がマリアに寄り添いやすくなっていたように思えます。

また「レッドデビルは知らない」では、今後再登場してきそうな人物が多かったため、メモ代わりにまとめておきます。

セリーヌ
ハイスクール時代のルームメイト。
マリアのワトソン役をつとめられる程の信頼関係と高い洞察力を持つ。
今回限りの登場人物にしてはあまりにも個性が強すぎるため、今後再登場する可能性有り?

フレデリック
マリアの伯父。
現在も警察を続けていれば再登場の可能性有り?

■■■■■■
続編で決着をつける可能性有り?

後悔は残ったものの出来る事はやった漣とジョンに対し、まだマリアはやり残した事があるため「レッドデビルは知らない」に関してはいずれ完結編が来て欲しいですね。

ちなみにこの話は一際トリックが複雑で、説明に図も使われていないため、私の頭では真相を理解するだけで精一杯でしたね。
読んでいる途中も消去法で犯人自体は分かりやすくなっていたにも関わらず、真相に全く近づける気配がなく歯がゆい思いをしました。

スケープシープは笑わない(マリア&漣)

「赤鉛筆は要らない」「レッドデビルは知らない」をふまえた要素が多いため、最後にこの話が来たのは納得でした。
この話のみ書き下ろしエピソードであるせいか、他の短編と比べあっさりめなテイストになっています。
しかし前の2編で気持ちが暗くなった直後に読む話としては、これぐらいの軽さが丁度良かったです。
(扱われたテーマは決して軽いものではありませんが)

マリアと漣の出会いだけでなく、ジェリーフィッシュ事件へと時系列を繋げる話でもあるため、ストーリーとしてもマリア&漣シリーズを楽しみたい人に是非オススメしたい話です。

せきゆら
せきゆら

マリアと漣がバディを組んで歩み始める前向きな話なので、読後感も良かったです。

まとめ

広い意味で「いじめ」がテーマとなった本書。
実はまだ出会って間もないマリア・漣・ジョンですが、その過去には意外な共通点がありました。

これまでのマリア&漣シリーズは過去作の事件や登場人物を続編に絡ませてくる展開が多いため、彼らの過去が今後ストーリーにどう絡んでくるかも注目です。

せきゆら
せきゆら

個人的にはいつも不謹慎スレスレなジョークを飛ばしつつ、優秀な仕事ぶりを見せる検死官・ボブの過去もいずれ読んでみたいですね。

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