【感想】「夢幻花(東野圭吾)」追いかけてはいけない黄色いアサガオとは

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ミステリー

この記事では「夢幻花(東野圭吾)」のあらすじや感想を紹介していきます。

現在は自然界に存在しないと言われる黄色いアサガオが題材となった本書。
作中にて「江戸時代の時点では存在していた」と言及されていましたが、これは事実で実際に図譜が残っているようです。
(「黄色いアサガオ 図譜」で検索するとすぐに出て来ました)
では何故現代には存在しないのか。

せきゆら
せきゆら

これが本書の謎を解く鍵となっています。

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【夢幻花】のあらすじ・登場人物

花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。
第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。
一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。
宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。
第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。

「BOOKデータベース」 より

登場人物(主要人物は色付き)

蒲生蒼太……大阪で原子力工学を学ぶ大学院生。
蒲生要介……蒼太の異母兄。
蒲生志摩子……蒼太の母。
蒲生真嗣……蒼太・要介の父。

秋山梨乃……東京の大学生。
秋山周治……梨乃の祖父。
鳥井尚人……梨乃の従兄。

早瀬亮介……西荻窪署の刑事。
早瀬裕太……早瀬の息子。 

伊庭孝美……蒼太の初恋相手 
日野和郎……久遠食品研究開発センターに勤める研究者。秋山の元同僚。
大杉雅哉……尚人のバンド仲間。
工藤アキラ……有名なミュージシャン。ライブハウス「KUDO’s land」のオーナー。

【夢幻花】はどのような人にオススメ?

・ミステリーだけでなく、人間ドラマも楽しみたい人
・複数人の視点から進むストーリーが好きな人
・アサガオの知識がある人(あれば良い程度で必須ではありません)

【夢幻花】の感想

犯人の名前は明かしていませんが、感想を書く上で必要なネタバレをしておりますので未読の方はご注意ください。

場面転換や視点切り替えが多いのに混乱しない

本書は主に蒲生蒼太・秋山梨乃・早瀬亮介の視点がめまぐるしく切り替わりながら進んでいきます。
そのため、はじめは関連性が見えない場面ばかりが続いて混乱させられました。

しかし読み進むにつれ点と点が鮮やかに繋がっていくので、すべての謎が解けた瞬間は非常にスッキリさせられました。

せきゆら
せきゆら

話としても続きが気になる所で場面転換し、先へ読ませようとしてくるのでついつい一気読みしてしまいました。

人間ドラマ要素が強い反面、蒼太と梨乃以外の掘り下げは控えめ

東日本大震災・原発事故により、原子力関係の会社への就職に迷いが生まれた蒲生蒼太
オリンピックを目指すほどの水泳選手だったが、ある日水に入ると心因性の発作が起きるようになり、泳げなくなってしまった秋山梨乃
裕太の恩人である秋山周治を殺害した犯人を、この手で捕まえると息子に約束した早瀬亮介
本書は事件と同時進行していく彼らの物語も見どころとなっております。
中でも蒼太・梨乃のパートは青春小説、早瀬パートは警察小説の要素が含まれているため読んでいて飽きません。

その反面、登場人物が多かったせいか、蒼太と梨乃以外の人物達が深く掘り下げられなかったのは唯一残念な所でした。
例えば早瀬は「犯人を捕まえる」という目的を達成した所で出番が終わってしまうため、約束を果たした裕太とのその後が一切語られていなかったり、途中から蒼太を徹底的に避けるようになった志摩子のその後に関しても最後まで不明となっています。

個人的には、先祖代々引き継がれる負の遺産を背負い戦って来た要介や孝美が気に入っていたので、もっと彼らの心情を深掘りして欲しかったのですが、彼らはミスリード要員だった上、これ以上話を広げると綺麗にまとまらなくなるので仕方ないのかもしれません。

せきゆら
せきゆら

実際、途中まで孝美は蒼太から指摘が入るまで疑ってしまいました。

聞けば過去に連載していた原作を、
「難点が多すぎて単行本に出来る代物ではない」(作者)
という理由で全面的に書き直したのが本書らしいのですが、その苦労が何となく人間描写の部分で垣間見えたような気がします。

アサガオの知識があれば理解しやすい設定

「夢幻花とは何なのか」
「なぜ黄色いアサガオは絶滅したのか」
2つの疑問は物語全体の重要な謎となっているのですが、その答えは作者の創作で作られたある設定がきっかけとなっています。
歴史を絡めたこの壮大な設定は非常にユニークな発想で、本書の魅力の1つとなっているだけでなく、読み手が真相を見抜くのをより困難にさせる役割を果たしていました。

しかし前述の通り、ある程度アサガオの知識を持つ方であれば予想出来るかもしれない内容なので、詳しい人にはより楽しみやすい作品になっていたと思います。

私も過去に読んだ小説でアサガオのあの特性を利用した話を知っていたため、黄色いアサガオの真相を知った時は妙な納得感がありました。

せきゆら
せきゆら

知ってはいても察しが悪いので、肝心の真相には全く到達出来ませんでしたが……。

最後に

数多く存在するミステリー小説の中でも、本書は特に爽やかな読後感だった印象が強いです。
黄色いアサガオの種を悪用する者達との戦いはまだまだ続きそうですが「蒼太と梨乃の物語」としては、これが最高のエンディングだったと思います。

せきゆら
せきゆら

本書が完成するまでの経緯を考えると続編は難しいのでしょうが、要介・孝絵のその先の戦いも見て見たい所です。

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