この記事では「ヴァンプドッグは叫ばない」についてあらすじ・感想などを紹介しています。
前作は登場人物達の過去編だったのもあり、久々に長編でマリア&漣のタッグを見られるのが楽しみでした。
マリア&漣シリーズの感想記事はコチラから↓
1.ジェリーフィッシュは凍らない
2.ブルーローズは眠らない
3グラスバードは還らない
4.ボーンヤードは語らない
5.ヴァンプドッグは叫ばない(当記事)
【ヴァンプドッグは叫ばない】のあらすじ
U国MD州で現金輸送車襲撃事件が発生。
襲撃犯一味のワゴン車が乗り捨てられていたのは、遠く離れたA州だった。
応援要請を受け、マリアと漣は州都フェニックス市へ向かう。
警察と軍の検問や空からの監視が行われる市内。
だがその真の理由は、研究所から脱走した、二十年以上前に連続殺人を犯した男『ヴァンプドッグ』を捕らえるためだった。
しかし、『ヴァンプドッグ』の過去の手口と同様の殺人が次々と起きてしまう。一方、フェニックス市内の隠れ家に潜伏していた襲撃犯五人は、厳重な警戒態勢のため身動きが取れずにいたが、仲間の一人が邸内で殺されて…!?
厳戒態勢が敷かれた都市と、密室状態の隠れ家で起こる連続殺人の謎。
マリアと漣が挑む史上最大の難事件!
大人気本格ミステリシリーズ第五弾。「BOOKデータベース」 より
登場人物(一部のみ)
U国A州フラッグスタッフ署
マリア・ソールズベリー……警部
九条漣……刑事、マリアの部下
ボブ・ジェラルド……検死官
他
ジョン・ニッセン……U国第十二空軍少佐
アイリーン・ティレット……天才少女、マリアの協力者
ドミニク・バロウズ……U国A州フェニックス署の刑事
【ヴァンプドッグは叫ばない】はどのような人にオススメ?
・マリア&漣シリーズの過去作を読んだ人
→過去作を読んでいる事を前提としたストーリーであるため。
・SF風の特殊設定が好きな人
・サスペンスやホラーが好きな人
ネタバレ注意【ヴァンプドッグは叫ばない】の感想
ネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。
複数のパートを織り交ぜたストーリー
マリア&漣シリーズといえば特殊設定だけでなく、複数のパートから真相に迫っていく構成も特徴です。
今回も主に3つのパート(下記参照)から話が進んでいきました。
・ヴァンプドッグーインサイド
→金輸送車襲撃事件を起こした犯人の1人・エルマーの視点から、仲間内で起きた連続殺人事件を描く
・ヴァンプドッグーアウトサイド
→マリア達の視点から、一般市民を標的にした連続殺人事件を描く
・インタールード
→「ヴァンプドッグ」に関する様々な話
ヴァンプドッグは1人しかいないとされているのも関わらず、2つの場所で交互に事件が起こる構成となっているため、これまで以上に頭が追いつかなくて混乱させられました。
犠牲者数も過去最多ではないでしょうか。
こうなると「もう1人犯人がいると考えるしかないのではないか……」と私は楽な推理に逃げてしまいましたが、本書はそんな手段を使わずとも単独犯で解決してくれます。
ホラー要素満載な特殊設定
毎回SF風の特殊設定を活かしたトリックが魅力であるマリア&漣シリーズですが、今回は「狂犬病ウィルス」を元にした特殊設定が登場します。
このウィルスは、20年以上前に連続殺人を犯し、国立衛生研究所に収監された男『ヴァンプドッグ』が唯一の感染者であると説明されています。
これを初めて聞いた時「狂犬病は致死率ほぼ100%と聞いたような気がするけど、ヴァンプドッグが生きているなら違うのか!?」と戸惑いましたが、どうやらヴァンプドッグが感染している狂犬病ウィルスは「変異株」という特殊設定が混ざったモノだそうです。
そしてその特殊設定というのは、ある条件を満たせば、感染した人間がなんと「吸血するゾンビ」と化す事。
それを事前に予告されないままゾンビが登場してきた時は、ただただ唖然とさせられました。
簡単に発症するものではないため、致死率は大きく低下していますが、あまりにも代償がでかすぎます。
これだけを聞くとシュールなゾンビ映画になりかねない特殊設定ですが、そこはさすがにマリア&漣シリーズ。
この世界における変異株の狂犬病ウィルスについては、丁寧にそれらしい理由付けをしてくれます。
そしてこのウィルスはもちろん事件のトリックに組み込まれているため、内容はしっかりミステリー小説になっています。
発症どころか感染もなかなかしない所が、ゾンビ映画との大きな違いかもしれません。
過去作で活躍した人物達が総出演
過去作の事件に関与した人物が、続編以降も登場する事が多いマリア&漣シリーズ。
今回も主要人物であるマリア・漣・ジョンの他にドミニクやアイリーンも引き続き登場します。
更に今回は第3作目「グラスバードは還らない」からバーバラ・ジョイスとエマ・グラプトン。
第4作目「ボーンヤードは語らない」に収録された作品「レッドデビルは知らない」からセリーヌ・トスチヴァン、ヴィンセント・ナイセルも再登場を果たします。
再登場した人数も、過去最多かもしれません。
これまではドミニクやアイリーンのように、捜査に協力出来る人物ばかりが再登場していたのもあり、一般人のバーバラやエマがあのような形で再登場したのは、あまりにも予想外で驚きました。
その一方で、マリアに警察の道を選ばせた元凶であるヴィンセントは、予想よりも早い再登場でした。
彼に法の裁きを与える事がマリア&漣シリーズの最終目標だと思っていたので、しばらく再登場しないものかと思っていましたが、どうやらヴィンセントとはこれから長い戦いを繰り広げることになりそうです。
果たして警察の権力が通用しない立場にいる彼に、これまで犯してきた罪を償わせる事が出来るのでしょうか。
そして唯一ヴィンセントとマリアの因縁を知るセリーヌも、フェニックス署の検死官として再登場を果たします。
有能かつクセが強いキャラクターをしていたので、今後も出てきそうな気配はありましたが、まさか共にヴィンセントへ立ち向かってくれるとは思いませんでした。
当時から数少ないマリアの味方でしたが、今後も頼もしい存在として活躍してくれそうです。
同じフェニックス署のドミニクや検視官・ボブとの邂逅も必見です。
最後に
本シリーズの中で、最もインパクトのある特殊設定だった変異株の狂犬病ウィルス。
いよいよウィルスまで架空の設定で登場するとなると、今度は何の特殊設定が来るのかまったく予想が出来なくなりました。
次も驚きの特殊設定を期待しています。
ヴィンセントも何か企んでいるようですし、非常に続きが気になります!